初めてオーセンティックバーに行った時の話 VO3


そのままシェイカーを上下に振り最後の一滴まで振るい出した。

と同時に手際よく、素早くシェイカーをセットし、ジン、レモン汁、
シュガーシロップの順に注ぎ、ふたをしてシェイクし始めた。

シェイクのリズミカルな音が、店内に鳴り響き心地の良いBGMになっていた。
シャカシャカシャカとだんだん速くなりピークを迎えたと思ったら、
そのリズムがだんだんとゆっくりになり終わった。
漢詩の起承転結のようだった。

中の液体をグラスに注ぎ、シェイカーの中の氷を選別しながらグラスに移した。

冷蔵庫から炭酸水を取り出し、グラス9分目まで注ぎ、
バースプーンをグラスの底まで静かに落とし、
トンと底を叩いて静かに抜いた。

バースプーンを左手の親指と人差し指の間に当て、しずくを落とし、
味見をした。

マスターは、目を上に向け軽く頷いた。

あまりの緊張で体が固まりながら、
一部始終を息を佇んで見ていた僕も、
なぜかその瞬間にホットした。

出来上がったジンフィズが、「お待たせいたしました」
と同時に、僕のコースターの上に運ばれた。

マスターは、グラスを見つめつつ、
グラスに手を掛けたまま2〜3秒止まっていた。

ジンフィズがまるでわが子で、
手放すのを惜しんでいる様だった。

僕は、生命を頂くかのような緊張感で、口を付けた。



今回はこの辺で、


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